ふつうのじゆうちょう

日々思ったこと、思い出したことを自由に書いていきます。

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雨の日の優しさ

今週のお題「傘」

 

その日、突然大雨が降ってきた。視界が白く染まるほどの雨。道路には雨水が溜まり、車が通るたびに水しぶきを上げていた。大通りを走行中、細い道路に一台のトラックが停まっているのが見えた。その側には小学校低学年くらいの小柄な男の子。打ち付けるような雨の中、男の子は傘を差さずに下校していた。運転席の窓を開けた男性に声をかけられ、立ち止まる男の子。すぐに運転手の男性が男の子に向けて何かを落とした。傘だった。

 

男の子はすでに全身がずぶ濡れになっている。今さら傘を差したところで、意味があるだろうかと思ってしまう。けれど、男の子にとっては違うだろう。大雨の中、傘を差さずに下校する心細さを救ってくれたトラックの運転手。男の子はきっと、困っている人がいれば手を差し伸べるような青年になっているのではないかと思う。

 

人にかけた情けは、巡り巡って自分へと返ってくるという意味の『情けは人の為ならず』。『情け』とは思い遣りのことをいう。雨に打たれる男の子に傘をあげたトラックの運転手の優しさは男の子の記憶に残るだろう。そして運転手の男性にもきっと、何か良い報いが訪れたことだろう。

 

1963年の今日、『小さな親切』運動本部が発足した。その年の東京大学の卒業式の告辞の中で、茅誠司総長が「小さな親切を勇気をもってやってほしい」と言ったことがきっかけとなってスタートした。“できる親切はみんなでしよう それが社会の習慣となるように”、“人を信じ、人を愛し、人に尽くす”をスローガンに運動が進められている。「人に親切にしよう」。言うのは簡単だが、実行するのは難しい。明らかに困っている様子の人がいても、さまざまなことが頭を巡り、話しかけるのを躊躇ってしまう。『情けは人の為ならず』、勇気を出して、一歩踏み出したい。