気軽に読めるミステリ『medium 霊媒探偵城塚翡翠』 作者:相沢 沙呼
推理小説家・香月史郎(こうげつしろう)と霊媒の少女・城塚翡翠(じょうづかひすい)の二人が事件を解決していく話。翡翠が『霊視』で情報を得て、それ理論的に組み立てていくのが香月の役目。よくある男女バディものだ。私は面白いと言われているものは何でも読むし、ライトノベルだって大好きだ。期待して読み始めた。
読み始めて数ページで確信した。この本、私に合わない。心理描写がどうにも頭に入ってこないのだ。登場人物、特に香月に共感できない。本屋大賞にノミネートされ、このミス、本格ミステリ・ベスト10で1位を獲得。きっと面白いはずだと言いきかせて読み進めた。
ミステリ作品はあまり読まないのだが、それでも全体的に軽い印象で心に残らない。私はかなり涙もろいのだが一度も泣かなかった。驚くほど感情が動かされなかった。そんな中で一点、お、思ったのが終盤にある台詞だ。
「小説で言うなら、ほとんど心理描写がなされない中身が空っぽの主人公の話を読んでいるようなもの」
medium 霊媒探偵城塚翡翠 359ページより
もしかして、この小説自体のことを言っているのではないかと思った。だとすれば、見事としか言いようがない。
すべてが、伏線。
初版の帯にはそう書かれているそうだ。 読み終えて確かにそう思う。香月に感情移入できないのもそういうことかと納得できた。
本格ミステリを求めている方には少し物足りないかもしれないが、文章は読みやすく、一気読みできる一冊。特に、ライトノベルのようなキャラクターが前面に押し出された作品が好きな方にオススメだ。