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誰かの救いになるかもしれない一冊『幽霊人命救助隊』作者:高野 和明

 

幽霊人命救助隊 (文春文庫)

幽霊人命救助隊 (文春文庫)

  • 作者:高野 和明
  • 発売日: 2007/04/10
  • メディア: 文庫
 

自殺した四人の前に現れた神は、天国行きの条件として四十九日以内に自殺しようとする百人を救えと命じた。地上に落とされた『救助隊』の四人は神から与えられたアイテムとチームワークを駆使し、次々と死にたいという欲求に囚われている人を救っていく物語。

 

『死』という、どうやっても重くなってしまうテーマだが、救助隊となった四人の年齢や立場が違うこともあり、ジェネレーションギャップで笑いを誘う場面や幽霊だというのに壁をすり抜けられなかったり、移動に電車や車を利用するというコミカルさもあり重苦しい雰囲気をやわらげてくれるの。人々を救っていく中でそれぞれが自身の死について考えるのだが胸を打たれる。中でも最後の一人を救った場面は涙が止まらなかった。

 

生きていく中で何も悩まないという人はいないだろう。悩みの大小あれど、人は常に何かに悩み、考えながら生きている。どうしようもなく辛い時だってあるだろう。どうして自分はこんな人生を歩まなければならないのだろう、生きていても何もいいことがないなどと悲しくなることもあるだろう。私自身、どうして今自分が苦しいのかわからないから余計に辛くなったという経験がある。この作品では一人一人の悩みと解決がリアルに掘り下げて描かれているということもあり、心当たりのあることが書かれている場面があった。生きづらいという気持ちが、ほんの少し和らいだ。この本を手に取ったのは作者のほかの作品が面白かったからという作者買いだったのだが、出会えてよかった。

 

「頑張るな!」「何事にも耐えるな! 仕事なんかどうでもいい! 休め! 巌の意志で、ぐうたらに徹するのだ!」

幽霊人命救助隊 234ページより

頑張りすぎている現代人に突き刺さるセリフだ。

「未来が定まっていない以上、すべての絶望は勘違いである」

幽霊人命救助隊 568ぺージより

 だから、もうちょっと気楽に生きてみよう。そう思った。